コラム 中村 晋

コラム1-9 WBSって何?

仁は、テレビ番組のWBSしか知らなかったニャン!

 Work Breakdown Structure (ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ)という言葉を知らなくも、別に恥ずかしいことではないと思いますよ。まあ、専門用語ですから。でもこちらのWBSが使いこなせるようになると、プロジェクト運営が格段にうまくできるようになりますから、これを機会にぜひ覚えてほしいものです。

 WBSの説明に入る前に、私がよく見るプロジェクト・スケジュールを図表1に示します。なんの変哲もない、「普通の」プロジェクト・スケジュールだと思われた方も多いのではないでしょうか。しかし、プロジェクト計画としてこのスケジュール図「しか」ないのであれば、このプロジェクトはうまくいかないと、私は断言できます。

そりゃまたどうしてニャン!?

 問題は、主に以下の3点です。

  1. 工程が分解(ブレークダウン)されていないので、具体的に何をやればよいのかわからない(人によって解釈が異なるおそれがある)。

  2. 各工程に誰が参加するのか、誰が責任者なのかわからない。

  3. 各工程でどれだけ時間がかかるかわからない。したがって、決められた期間に完了できるかどうかわからない。

言われてみれば、たしかにそうだニャン!

 はい。そしてこのような問題を解決するのが、WBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ:作業分解図)だとされています。プロジェクト・マネジメントの教科書には、図表2のような説明図が出てきます。

 ただ、この図はWBSの概念を説明するためには適切な図だとは思いますが、実用的なものだとは言いづらいです。この図は(ExcelやPowerPointでの図形作画に慣れていないと)作るのも、維持管理するのも大変です。

 そこで私が推奨しているのは、図表3のようなフォーマットでWBSをつくることです。

 MS-Project等のプロジェクト・マネジメント専用ツールでも(当然!)同様な表は作れますが、私はこれをExcelで作ることに意味があると思っています。Excelは、事実上どこでも誰でも使えるツールだからです。

 このWBSを作成する際の注意点がいくつかあります。

  1. 階層は必要に応じて、追加していきます。
  2. 作業は、体言止め(例:インタビュー)ではなくて、目的語と述語を書く(例:業務プロセス図をもとに行う担当者にインタビューする)ようにします。ちょっと面倒ですが、誰が何をするのか誤解を招く恐れがほとんどなくなります。Excelを使えば、長い文でも問題なく記述することができます。
  3. 各作業で生み出される成果物を(なるべく)書くようにします。
  4. 各作業の責任者を(これは必ず)書きます。
  5. 各作業の所要時間を見積もります。

 ここまで作業を分解(ブレークダウン)することで、はじめて全体としてどれだけの工数がかかるかを見積もることが可能になります。

 これをスケジュールに落とす際には、当然、休日や(プロジェクトメンバーが専任でないのであれば)定常業務をこなすための時間も見込む必要があります。

ずいぶん手間暇がかかるもんだニャン

 たしかに、図表1が標準だと思っていて人にとって、図表3を作ることは、大きな負荷だと思います。しかし、きちんとしたWBSなしにプロジェクトを成功させることは、至難の業と言わざるを得ません。前回も同様のことを書きましたが、その工数がとれないのであれば、最初からプロジェクトはやらない方がよいのかもしれません。

ニャーン!厳しいけど、納得だニャン。

-コラム, 中村 晋