コラム 中村 晋

コラム1-8 プロジェクト・マネージャーの選び方

2022/12/16

プロジェクト・マネージャーの決め方もまずいニャン!?

 そうですね。言うまでもないことですが、プロジェクト・マネージャー(以後、PMと書きます)の選任は、プロジェクトの成功のために最も重要なことと言ってよいでしょう。

 PMの選び方を説明する前に、PMとは何をする人なのか整理しておきましょう。

 第6回でご紹介したPMBOK(ピンボック)によれば、PMとは「組織によって任命された人で、プロジェクトチームを率いてプロジェクト目標を達成する責任を負う」人だとされています。ひとことで言えば、プロジェクト成功のためには必要に応じて何でもやらなくてはいけない人、ということになります。

 もちろんそうは言っても、やるべきことは大体決まっているし、限定されています。PMの典型的(かつ重要)な仕事は以下のようになります。

  1. プロジェクトチームを編成する

  2. プロジェクト計画を立案し、経営者(プロジェクトオーナー)の承認を得る

  3. プロジェクトの進捗や品質を定期的に監視し、必要な手を打つ

  4. プロジェクトの課題とリスクを継続的に監視し、タイムリーに手を打つ

  5. 経営層をはじめとするステークホルダー(利害関係者)に、プロジェクトの状況を定期的に報告する

仕事がいろいろあるニャ。どんな人を選べばいいニャン??

 PMが持つべき条件として、私は以下の3つをあげたいです。

  1. プロジェクト目標に対する深い理解と、それを達成することへの情熱

  2. コミュニケーション能力

  3. プロジェクト・マネジメントに関する知識

 私が最初にあげたい条件は、プロジェクト目標を達成することが会社にとってどのような意義を持つのか深く理解しており、それを達成することに強い情熱を持っているということです。精神論に聞こえるかもしれませんが、プロジェクトは様々な困難に直面するのが常であり、その時にこの条件を満たさないPMは、へこたれたり妥協したりしてしまうものです。

 2番目がコミュニケーション能力です。ある意味で、プロジェクト・マネジメントはコミュニケーションの塊です。コミュニケーションの対象は、経営層、プロジェクトメンバー、エンドユーザー、管理職、ITベンダーと多岐にわたります。それらの人たちと、公式・非公式の様々な手段を使って、円滑なコミュニケーションをとることがPMには望まれます。

 そして最後が、プロジェクトマネジメントに関する知識です(この部分を強化していただくのが、このコラムの目的です)。

業務知識やITの知識はいらないのかニャン?

 もちろん、PMが業務やITに詳しいに越したことはないかもしれません(まったくの門外漢では困ります)。しかし私は、これらの知識はPMにとっての必須条件だとは思いません。これらの知識は、プロジェクトメンバーに補ってもらうことが可能だからです。

 むしろ、特定の業務プロセスや、技術そのものへのこだわりがないPMの方が、バランスのとれたプロジェクト運営ができる場合が多いようです)。

工場長も営業部長もPMを出したがらなかったニャン

 これもよくある話ではあります。

 たしかに、PMとしての条件を備えた人材は、日ごろの業務もよくできる、いわば職場のエースということになるでしょう。しかし、ここは経営者としての覚悟が問われる場面だと思います。定常業務に少しの(場合によっては多大な)影響があっても、そのプロジェクトを完遂したいのであれば、「エース」をPMとして抜擢するという意思決定をすべきではないのでしょうか。部下やまわりの人に仕事を任せることで、他の人材が育つという副産物が生まれることもよくあります。

 逆に言えば、犠牲を払ってでもやり遂げなければいけない時にだけ(それだけの目標が設定できる時にだけ)、プロジェクトは実施すべきなのだ、とも言えます。

なるほど~ニャン!!

-コラム, 中村 晋